おるたネットニュース vol.29 2022年12月30日配信
コラム:ネガティブ・ケイパビリティ
古山明男
「ネガティブ・ケイパビリティ」と呼ばれる、不思議な能力があります。大きく言えば学習能力の一つ言ってもいいです。簡単に言えば、答えの出ない事態に耐える能力のことです。
私の塾でのことです。中学生たちが数学の問題をやっていました。ある女の子は、しばらく考え込み、あれこれいじっていたのですが、やがて「わかんない」と言って、畳の上にひっくり返りました。
その女の子は、飲み物をすすって、しばらくぼんやりしたり、スタッフとダベったりしていました。どれだけ経ったでしょうか、いつのまにやら、その子はまた問題に向かっていました。そのうち、スタッフに「これ、こういうこと?」などと、一言二言確かめると、鉛筆を動かしていました。
そのうち「できた!」
私が見せてもらうと、合ってます。
いろんな子に教えてきましたが、「わかんない」と元気よくひっくり返るような子は、たいてい、なんとかなります。
ところが、いつまでも鉛筆をにぎったまま、問題にかじりついている子もいます。やめることに罪悪感を感じているので、離れられないのです。そうすると、いつまでたっても、わからないままです。
しばらく考えてもわからなかったということは、その子が今持っている知識と技能では答えを出せないということです。いったん、「わからない」ということを十分に認識して、いままでの考えを御破算にする。すると、そこに、答えが流れ込んできます。これがネガティブ・ケイパビリティです。
大人と話しをしていても、立て板に水を流すように答えが返ってくる人は、どうも、もうわかっているようなことしか言わない。考え込んだり、言いよどんだりしている言う人のほうが、的を突いたことを言うものです。
試験で点をとることを目標にした教育では、わからなくてもとにかく答えを書くことがよしとされませす。わからないなら、答えを暗記してしまうことを勧められます。これは、ネガティブ・ケイパビリティの重要さがわかっていません。
正解を出すことを強要されない教育って、大事です。、
イベント情報
「広島教育視察報告会」
主催 日本PBL研究所
日 時 2023年1月7日(土) 13:00~14:20 開場12:30
会 場 東京都品川区港南 東京海洋大学 品川駅から徒歩10分程度
参加費 無料
定 員 30名
http://pbl-japan.com/hiroshima2022/
イエナプランを学ぶオンライン講座 2023
主催 ほんの木
初心者のための『基礎編』(全6回)
実践者のための『応用編』(全9回)
指導者のための『学校・チーム研修』(全6回)
保護者のための『家庭でできるイエナプラン』(全4回)
https://www.honnoki.jp/c/JenaCourse/
編集後記
戦中、戦後には、生活必需品や主要食料品が配給でした。やがて、タバコも、塩も、米も、配給は終わっていきました。でも、一つだけまだ終わっていない配給があります。義務教育学校です。
(古山)