おるたネットニュース vol.10 2015年4月2日配信
コラム:「食べる」ことと「学ぶ」こと
古山明男
「食べる」ことと「学ぶ」ことは、よく似ています。どちらも、子どもの自発性が伴わないと、他人からはどうしようもありません。
保育園で、用意した食事を子供たちがなかなか食べません。遊んでいる子、何かに気を取られている子、何をやってもゆっくりしている子、好き嫌いのある子、いろいろいます。保育士さんが「早く食べるの!」と怒鳴りつけます。「早く食べないと、もう食べさせないからね」と脅します。食べようとしない子に、口に押し込むこともあります。
中学校で、生徒たちが勉強しません。おしゃべりしている子、こっそり漫画を読んでいる子、空想にふけっている子、手いたずらをしている子、いろいろいます。先生は「こら、ちゃんと聞け」と叱ります。「内申点に響くぞ」、「将来は、ニートだぞ」と脅します。宿題を出し、テストをし、順位付けをし、なんとか頭に押し込もうとします。学校のシステムがそのようにできています。
もちろん、すべての保育士が、学校が、ということではありません。でも、何かがおかしい。家庭ではちゃんと食べているのです。学校の外では、何かに集中してやっているのです。
叱ったり脅したりしている人たちは言います。「子どもたちの将来のためにやっているのです」そんなことは、ウソです。与えられた職務を、決まり通りに終わらせたいだけです。子どもを研究する気がなく、相手が子どもだと、力づくで押し通すのです。それが子どもたちに伝わって、子どもたちも自分のペースでやりたがり、大人に対抗するのです。
食べさせることだと、無理にでも食べさせなくても、手段はいくらでもあるということは、見えやすい。食欲のない子なんかいないということは、誰でも知っています。でも、学校の学習では、「子ども将来のために」は言い訳だということが、なかなか見えません。学習意欲のない子なんていない、ということがすぐに忘れられます。
論説:スモールスクールの時代がやってくる・その4 フレネ学校とイエナプラン学校
辻 正矩 箕面こどもの森学園
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパでは新教育運動とよばれる教育刷新の運動がありました。その影響のもと、各国に子どもの個性を尊重する自由な学校がたくさん生まれました。シュタイナー学校、サマーヒル・スクール、フレネ学校、イエナプラン学校などは今日まで残っており、現代のオルタナティブ教育に大きな影響を及ぼしています。しかも、これらの学校の多くは、生徒数が100人以下のスモールスクールです。
フレネ学校は1934年に南フランスのヴァンスに、イエナプラン学校は1924年に東ドイツのイエナに、ほぼ同じ時代に創られています。両校には共通する点がたくさんあります。例えば、マルチエイジ(異年齢グループ)によるクラス編制と個別学習方式の採用です。フレネ学校では、年少(3~5歳)、年中(6~7歳)、年長(8~11歳)の3クラスで学びます。イエナプランの学校のほとんどは、年少(4~6歳)、年中(6~9歳)、年長(9~12歳)の3歳区切りのクラス編制がなされています。
マルチエイジの利点は、年下の子は分からないことがあれば年長の子に聞くことができるし、聞かなくても年長の子がやっていることを真似ることによっても学ぶことができます。一方、年長の子は年下の子に教えること、すなわち自分の学んだことを言語化することによって、より深く学ぶことができます。年齢の異なる子ども間の教え合い、助け合いといった相互作用は、教師への依存度を低め、子どもたちが自律的、協同的に発達していくことを促します。
フレネ学校には朝の会があり、家庭でのデキゴト、大切にしているおもちゃのこと、気になる新聞のニュースなどを話します。「話す」ことによって自分の思いや考えを人に伝えますが、人に共感的に聞いてもらうことによって、自分が受容されていると感じることができます。また、人の話を「聞く」ことによって、話者と話題を共有するとともに、話者についての理解も深まります。イエナプラン学校でも「話す」ことと「聞く」ことが重視されており、学習時間やその他の時間でも、グループで集まって話し合うことが頻繁に行なわれています。
年中クラスや年長クラスで優位なモードは「書かれたことば」です。「書かれたことば」の学習は、ふつうの学校では教科書による一斉授業というかたちになりますが、フレネやイエナプランの学校では個別学習によってなされます。これらの学校には、対話や個別学習を促進するのによい雰囲気と環境とがあります。
ニュースと解説:フリースクール等をめぐる政府と国会議員の動き
古山明男
首相の所信表明演説に、フリースクール支援が盛り込まれ、なんらかの政策が打ち出されることは、ほぼ確実な情勢です。下村文科大臣が政策推進の中心におり、その任期中に何が打ち出されるのかが、注目されます。
文科省の「フリースクール等に関する検討会議」は第3回まで開催されました。学校に行かない子の学習支援をフリースクール等ですることが必要である、という意見が多くなっています。6月に中間報告が出るというスケジュールです。この中間報告でほぼ骨格が決まります。
文科省のもう一つの会議である「不登校に関する調査検討協力者会議」は、学校を中心とする従来型での不登校対応を検討しています。
国会議員の「超党派フリースクール等議員連盟」は、2月18日の総会で、議員立法によって「普通教育支援法」を作ると発表し、関係者に大きな波紋を投げかけました。しかし、その後の動きはありません。
民間側は、「多様な学び保障法を実現する会」の運営会議を中心に、情報共有と情勢分析を行っています。
イベント情報
音楽とトークによる「子育ての魔法の翼」
内容:天外伺朗が自らの子育ての中で湧き出してきた珠玉の6曲を、ジャズ歌手の大城蘭が軽快なボサノバのリズムで歌う。日本全国から子供を保育園に入れるため続々と引っ越してくるという、
長野の街興し型保育園「幼児教室大地」の青山繁園長とノンたん母さん先生と大手社長と天外伺朗の対談、そして質疑応答を企画。
日時:2015年4月5日(日)
12:30 開場
13:00-17:00 大城蘭ライブ、天外司朗対談
17:30より 懇親会(当日参加者募集、場所費用は当日)
会場:東京ウイメンズクラブ(青山)
入場料:2000円(小学生以下無料、子連れ大歓迎、
園長およびオルタナテイブ教育主催者無料)
予約は不要です、当日直接会場受付にお越しください。
「清水満さんに学ぶ デンマーク民衆の遊びと、生のための学校」
日時:2015年4月5日(日)10:00~16:30
場所:グリーンコミュニティ リベンデル(神奈川県茅ケ崎市)
内容:デンマークの民衆の遊び、イドラット・フォルスクに親しみ、「生のための学校」のお話しを聞く会を開きます。
お申し込み等詳細は下記のURLへ
http://kimyuki.com/blog/1013.html
おるたねカフェ、イエナ・カフェ共催「学校の作り方」
日時:2015年4月25日(土)14:30~17:00
場所:浦安市民プラザwave101 サロン6 (京葉線新浦安駅)
内容:草の根で学校を創っている人たち、創ろうとしている人たちのための、情報交換と相互支援の場です。関心を持つ一般の方たちも歓迎です。
定員:30名
参加費:500円
申込み:山田順子 chaochoco925@gmail.com まで
編集後記
文部科学省のフリースクール等に関する動きはこの秋ぐらいまでが勝負でしょう。これからの子どもたちが多様な学びを自由に選べる社会を創り上げたいものです。あとで悔いの残らぬよう行動して参りたいと思います。
(きむさと)