おるたネットニュース vol.9

おるたネットニュース vol.9 2015年3月19日配信

論説:韓国のオルタナティブスクール

朝倉 景樹 NPO法人東京シューレ シューレ大学

韓国にはオルタナティブスクールが100あると言われています。1997年にガンディースクールが設立されて以来、オルタナティブ教育の高まりがあり、社会の注目も集めています。韓国の受験競争は日本を上回る状況にあり、毎年のように日本でも受験会場に急ぐ受験生がパトカーを使ったというニュースが報道されています。韓国社会と日本社会は共通する点が多くあります。しかし、違った点もあります。

韓国のオルタナティブスクールに通う子どもは、日本より多くいます。就学年齢になって初めからオルタナティブスクールを選ぶ子ども達は、全体からすると少ないです。一般の学校が合わない子どもたちは不登校を経験せずにオルタナティブスクールに転校したり、ホームエデュケーションを選んだりしています。

それには、非常に競争的な大学入試に備え過酷な高校を辞める子ども達が増えていった90年代後半にオルタナティブスクールが活用しやすい特性化高校という制度ができ、オルタナティブスクールが広がっていったという歴史が関係しています。この制度は中学校も対象にして特性化学校というフレームになり、さらに数年前にはオルタナティブスクール法もでき、約半数のオルタナティブスクールが教育制度に位置き、公費の支出も受けています。韓国ではオルタナティブスクールは実際に選択しえる教育の一つとなっています。オルタナティブスクールは激しい受験指導などはしませんから、名門大学を目指すには不向きな選択とも考えられ、オルタナティブスクールを選ぶことは「勇気のある選択」と言われることもあるようです。しかし、オルナタティブスクールを出て受験勉強をしていわゆる名門大学に進学する人もいます。

韓国と日本で最も違うことの一つは不登校の意識です。韓国ではいじめや、学校の雰囲気になじまない、などの理由で学校に行かなくなってオルタナティブスクールに来る子どもたちは、多くの場合、不登校という意識を持ちません。自分に合わない一般の学校から、自分に合うオルタナティブスクールに移った、転校したということであり、「不登校をした」という整理にはなりません。日本では「普通に通える学校に行けない」というプレッシャーがかかりやすく、自己否定感につながることも珍しくありませんが、韓国ではあまりそのようなことは無いと聞きます。オルタナティブスクールやホームエデュケーションが社会に位置づいた形で、選択しえる代替として存在することが出来ているからです。日本でも、今の学校以外の教育を選べる制度が必要だと感じます。

論説:スモールスクールの時代がやってくる・その3「デンマークのスモールスクール」

辻 正矩 箕面こどもの森学園

デンマークは、ヨーローッパ諸国の中でも福祉と教育が最も進んだ国です。そのデンマークの教育の中で特筆すべきことは、170年も前からフリースクール(自由学校)があったことです。それは、フォルケ・ホイスコーレとよばれる民衆による民衆のための学校です。

19世紀末、国によって義務教育制度が敷かれ、公立学校がつくられるようになりました。それに対抗して、国から民衆の手に教育を取り戻すため、フォルケ・ホイスコーレ運動を推進する人たちが、初等教育を行なうフリースコーレを各地につくりました。その伝統は今日まで受け継がれ、デンマークの教育を豊かで多様なものにしています。

デンマークでは私立学校(フリースコーレを含む)を設立するのはそれほど難しくはなく、一定数以上の生徒と校舎用の建物があればよく、国からは助成金が出ます。フリースコーレは規模が小さく、ほとんどが生徒数200人以下のもので、100人以下のものが6割以上を占めています。

ランスグラウ・フリースコーレは1869年に障害児をもった親たちが中心になって設立された学校です。この学校には7〜14才の生徒126人が通っています。1クラスは18人。この学校への入学希望者が多く、入学希望者の長い待ちリストができているとのこと。

各クラスを覗いてみましたが、全員が一斉に先生の方を向いて話を聞いているという日本の学校でおなじみの光景見られませんでした。先生の回りには質問に来た数人の子がいて、他の生徒は自分の好きな場所で作業をしていたり、数人のグループで話をしたりしていました。理科の授業では質量と比重のことを学んでおり、グループ毎に物体の重量や体積をはかり、比重の計算をしていた。日本の小学校の方がもっと効率よく授業が組み立てられていると思いますが、デンマークの子どもたちの方が授業を楽しんでいるように見えました。

この学校のモットーは「子どもが子どもであることを保証する」で、校長先生はこの学校の特徴として、スタッフの責任感が強い、教師と親との関係が良好である、よい雰囲気が保たれているなどを挙げられました。

長年の自由な教育の実践によって、スリースコーレの教育方法がよいことが広く知られるようになり、今では公立学校にも、子どもの自由と主体性を尊重する教育法が取り入れられています。日本の学校も、早くそうなることを願わずにはおられません。

イベント情報

PBLフェスタ2015

日時:2015年3月28日(土)13:00-17:00
場所:東京電機大学 北千住キャンパス「丹羽ホール」
内容:プロジェクトに取り組んでいる全国の若者が一堂に会し、日頃の探究の成果を紹介し合う集いです。
http://www.pbl-japan.com/event.html

音楽とトークによる「子育ての魔法の翼」

内容:天外伺朗が自らの子育ての中で湧き出してきた珠玉の6曲を、ジャズ歌手の大城蘭が軽快なボサノバのリズムで歌う。日本全国から子供を保育園に入れるため続々と引っ越してくるという、長野の街興し型保育園「幼児教室大地」の青山繁園長とノンたん母さん先生と大手社長と天外伺朗の対談、そして質疑応答を企画。
日時:2015年4月5日(日)
12:30     開場
13:00-17:00   大城蘭ライブ、天外司朗対談
17:30より    懇親会(当日参加者募集、場所費用は当日)
会場:東京ウイメンズクラブ(青山)
入場料:2000円(小学生以下無料、子連れ大歓迎、
園長およびオルタナテイブ教育主催者無料)
予約は不要です、当日直接会場受付にお越しください。

「清水満さんに学ぶ デンマーク民衆の遊びと、生のための学校」

日時:2015年4月5日(日)10:00~16:30
場所:グリーンコミュニティ リベンデル(神奈川県茅ケ崎市)
内容:デンマークの民衆の遊び、イドラット・フォルスクに親しみ、「生のための学校」のお話しを聞く会を開きます。
http://kimyuki.com/blog/1013.html

おるたねカフェ、イエナ・カフェ共催「学校の作り方」

日時:2015年4月25日(土)14:30~17:00
場所:浦安市民プラザ
内容:学校を作った人、作ることに関心のある人たちの事例発表、懇親の場をもうけます。

編集後記

6月にフリースクール等に関する検討会議の中間報告がでる予定です。いろいろな意味で6月は一つの節目となるような気がしています。この3ヶ月間が頑張りどころですね。

(きむさと)

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