おるたネットニュース vol.15

おるたネットニュース vol.15 2015年10月16日配信

コラム:努力は夢中に勝てない

杉山まさる 東京サドベリースクール

前回は、私が様々な方々と一緒に、新しい教育の法律をつくっているというお話をさせていただいた。

大人が自分の興味や適正に合った仕事を選べるように、子どももその子その子にあった学びや育ちの場を選べる方がいい。せっかくの子どもの個性やユニークさが、一つの道だけでは大切にできないことも多いからだ。多様化の時代と言われて久しいが、子どもの教育環境は変わっていない。しかし、時代はすでに変わっている。子どもの興味を大切にしよう。嫌なことを頑張って努力するのもいいが、興味のあることはその何倍もラクに楽しく吸収し、さらにアイデアも出てくるはずだ。そして何時間でもできてしまったりする。あなたもそんな経験があるだろう。

「努力は夢中に勝てない」とは、洋服のブランドで有名な、株式会社ビームスの設楽洋氏の言葉だ。名言だと思う。たしかに努力は素晴らしい。が、努力はやはりどこかちょっと無理がある感じがする。夢中になっている人は、周りから見ると努力しているように見えるが、本人はやりたいことをやっているだけだ。ただそれが何時間も集中しているので、周りからは努力に見えるのだ。もう好きとかの次元も越えている。

そういうことを言うと、子どもが自由を知り、自分勝手な大人になるという人がいる。それはちょっと違うと思う。自由とは自分勝手ではない。自分がやりたいことをするためには、人との関わりが必要になってくるからだ。それは人生のどこかの時点で気づく。その時に身をもって(時には痛みを伴って)学ぶ。なかなかつらいレッスンだったりするが、事前に気づくというのは難しい。結局、自分の人生の責任は、自分にしか取れない。この厳しいけれど当たり前のことに、できるだけ早く気付ける環境があるといいと思う。そもそも現在の教育でも身勝手な大人はいるし、身勝手な人がいる社会をつくっているのも私たち一人一人なのだから、私たちにも責任がある。その人だけを責めるのは、自分には社会に対する責任がないと言っているようなもので、それも身勝手だと思う。

また、好きなことばかりしていたら我慢ができない人になるんじゃないかという人もいる。いやいや逆だ。好きなことだから乗り越えられる。嫌なことは頑張れないではないか。「俺は好きじゃない仕事をずっとしているよ」という人もいる(私もしていた)。しかし、その人生でいいならそういう人生を生きたらいいと思う。私は嫌だった。一度気づいたらどうしてもつらくなって、病む前に辞めた。心の声に素直に従うようにした。現在は好きなことをしているが、好きだから続けられるし、続けていたいと思う。なんでもそうだが、壁に思えることは起きる。そこでいちいちやめていては、積み重ねられない。積み重ねがなければできることは限られる。経験を積み重ねるからできることが増えるのだ。壁を超えられるか否かの違いの一つは、それがやりたいことかどうかというのは、要因として小さくないはずだ。

東京サドベリースクールは決まったカリキュラムやテストがない。生徒たちは自分のやりたいことを自分のハートに聞き、どうすればそれができるか考え行動する。自分で主体的に活動する。なので「夏休みいらない」とよく言う。サドベリーに来ることが楽しいようで、長期休みは皆に会えないし、つまらないそうだ。

私は学生時代、学校教育には疑問を持っていたが、学校自体は好きだった。友達がいたし、やりたい部活があったからだ。しかし、大人になり仕事をするようになって、「これはやりたい仕事ではない」「しかし、好きなことがわからない」となり、つらかった。

別に後悔しているわけではないが、私は自分のやりたいことを自分で見つけられる機会と、それをとことんやらせてもらえる学校も選択肢にあったらよかったと思う。実際にその時にならないとどちらを選んだかわからないが、選択できるということそのものがあったらよかったと思うのだ。

私には間に合わなかったが、私たちの子どもたちや、その子どもたちには色々な学校や学びの場が、選択肢の一つとして当たり前に選べる社会にしたい。そのためにも、サドベリースクールや様々な学校という実際の現場があることが必要だし、そういう場を選べる制度も必要だ。

しかし、現場と制度だけでは足らない。大人も子どもも学びを選べることが当たり前だという文化がなければならない。文化は時間がかかる。私が生きている間にできないかもしれない。しかし、それでも私にはやりたいことなのだ。

子どもも大人も、一人一人が本当にやりたいことをして楽しんでいる社会。一人一人が自分を大切にし、周りの人も大切にしている社会。

たくさんの方と、一緒にそんな社会にしていきたい。私は、サドベリー教育で貢献したいと考えている。

おるたネットフォーラムのお知らせ

リヒテルズ直子さん講演会 おるたネットフォーラム
「『教育の多様化』ってなんだろう」
日時 2015年11月28日(土) 14:00~16:30
場所 本町区民会館4階大集会場
東京都渋谷区本町4-9-7
「子どもの幸福度が高い国」 オランダでは、子ども一人ひとりのために、多様な教育制度を整えて来ました。そこに至るまでにはどのような経過があったのでしょうか。日本では現在、不登校、いじめ、落ちこぼれ、教育格差の問題など、必要な教育を十分に受けられない子どもたちが多くいます。いまそれに対する解決策として、家庭や学校外の学びの場を義務教育として認めようという法律の検討がなされています。日本の教育は「多様化」に向けて舵を切ることができるでしょうか。これからの日本の教育がどのように変わっていけるのかを、世界的な視点から予測してもらいます。
スケジュール:
13:40 開場
14:00 主催者挨拶
14:05 リヒテルズ直子氏 講演
「オランダと日本 教育多様化の歴史と今後の展望」
15:05 休憩
15:20 おるたネット代表 古山明男氏との対談
「教育の多様化 いま日本で起きていること」
15:50 質疑応答
16:10 終了
申込み
http://www.kokuchpro.com/event/e722c7e1c5e165a2ed09bd5e2219f15b/
参加費:有料(一般1000円、会員・学生800円)

イベント情報

誰もが認められ、学べる法律をつくろう!

多様な教育機会確保法 ここまできた!報告会 臨時国会へ向けて
日時:2015年10月20日(火) 19:00~21:00(開場13:40)
場所: 早稲田大学戸山キャンパス 33号館
新宿区戸山1-24-1
参加費:500円
定員:150名
主催:多様な学び保障法を実現する会、フリースクール全国ネットワーク
お申込み&詳細:
http://aejapan.org/wp/?p=527
http://kokucheese.com/event/index/338972/

オルタナティブ教育を学ぼう!~教育もいろいろあっていい~

「オルタナティブ教育」ついて学べる、連続講座。第3回「シュタイナー学校」
*話題提供者のお話を1時間程度聞いた後、グループディスカッションをします。
日時:2015年10月25日(日)14:00~16:00
場所: i-siteなんば
http://www.osakafu-u.ac.jp/access/
参加費:無料
定員:60名
主催:大阪府立大学大学院 人間社会学研究科「教育実践特論」、おるたね関西
お申込み&詳細:
https://www.facebook.com/events/1623823241205871/
http://kokucheese.com/event/index/338710/
*4回目以降の内容:フレネ・イエナプラン教育などを予定しています。

おるたネットフォーラム「リヒテルズ直子講演会」

「教育の多様化」ってなんだろう? 早くから教育の多様化が進んだ国オランダで教育研究に携わり、数々の提言を行ってきたリヒテルズ直子さんに、多様化への兆しが見える日本の教育の将来を語ってもらいます。
日時:2015年11月28日(土) 14:00~16:30(開場13:40)
場所: 本町区民会館 4階 大集会場
東京都渋谷区本町4-9-7
参加費:有料(一般1000円、会員・学生800円)
主催:おるたネット
お申込み&詳細:
http://www.kokuchpro.com/event/e722c7e1c5e165a2ed09bd5e2219f15b/

編集後記

内閣改造で馳浩議員が文科大臣に就任されました。教育新法は次の臨時国会へと持ち越しになりましたが、今までの路線が継続されそうでホッとしています。教育の多様化には継続して世の中への働きかけが必要です。

(きむさと)

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