おるたネットニュース vol.12

おるたネットニュース vol.12 2015年6月15日配信

コラム:「多様な教育機会確保法(仮称)」試案発表

古山明男 おるたネット代表

超党派の国会議員約60名による「超党派フリースクール等議員連盟」が、5月27日に議連の総会を開き、「多様な教育機会確保法(仮称)」の試案を発表した。立法チームを作って、今国会での成立を目指す。

この法律案は、フリースクール、ホームエデュケーション、夜間中学などの実情を認め、義務教育段階で多様な教育機会を確保しようとするものである。日本教育の多様化を推進したい立場としては、対象となる子どもの範囲が気になるが、「義務教育諸学校で普通教育を十分に受けていない子ども」としていることは評価できる。不登校になってしまった子どもではなく、他の教育を選択したい子どもも含むことができる。日本教育の新たな発展を期待することができる。

この法律案のもっとも重要な骨格は、保護者が学校、教委、フリースクールなどと相談の上「個別学習計画」を教育委員会に申請し、認定を受けることである。

ここで重要なことは、申請は任意であって、準備の整った家庭だけが申請すればよいことである。従来通り、不登校の児童生徒が学校に所属しながら、学校に行けるようになるのを待っていてもよい。すべての家庭が「個別学習計画」を作らなければならないわけではない。

その認定がどのようなものになるかは、法律成立後に決めるものとなっている。現在のフリースクール、ホームスクールの人たちが、そのままの形で合法性を獲得できる基準であることを望みたい。学校的な教科学習を、家庭やフリースクールに持ち込んでもなかなかうまくいかないであろう。さまざまな教育イノベーションを可能にするものであってほしい。

認定を行うことになっている教育支援委員会は、障害児教育を扱う部門である。ここに多様な教育を知る民間の人間が入る。あるいは、認定にあたる部門を第三者機関としていくことがが、重要である。

論説:学校選択の格差と教育バウチャー

高山 龍太郎 富山大学経済学部准教授

周知の通り、本年2015年1月より、文科省で「フリースクール等に関する検討会議」が開催されている。この検討会議の注目点の一つは、フリースクール等の学校以外の学びの場を公的機関に位置づけて公費助成が可能になるかどうかである。それが実現すれば、文科省が義務教育における学校選択を大幅に認めることになり、日本の教育制度が大きく変わるきっかけになるだろう。

ところで、現在でも、義務教育での学校選択は可能である。私立の小中学校への進学はその代表例である。あるいは、裏技的に、評判の良い公立小中学校の学区へ転居するという方法もある。また、不登校でフリースクール等へ通うことも、「不本意な学校選択」と言える。いずれの場合も費用がかかる点が問題である。

つまり、裕福な家庭に生まれた子どもは学校選択ができるが、そうでない子どもは教育委員会の決めた公立小中学校に行くほかない。親の経済力によって学校選択の機会に格差が生じているというのが、日本の現状である。

では、すべての子どもが希望する学校へ入学できる公平な学校選択の仕組みを作るにはどうすればいいか。それには、

  1. 学校に通う費用(授業料・通学費など)が無料であること
  2. 学校が希望者をすべて入学させること(全員受入不可能な場合は抽選)
  3. 学校の情報が十分に公開されていて選択の助言が無料で受けられること

などが大事である。その上で、実際に通学可能な範囲に複数の学校が存在し、さらには、実質的な選択が可能なように各学校が多様な教育内容をもつのが望ましい。

また、入学後に不満が生じることにそなえて、転校も容易にすべきである。もしこれらの条件が満たされるならば、家計が厳しく仕事で子どもの教育に十分な時間とお金がさけない母子家庭の子どもであっても、気に入った学校にめぐりあうことができるだろう。

教育バウチャーは、こうした公平な学校選択を可能にするための一つの方法である。教育バウチャーとは、用途を教育目的に限定した金券のことである。この金券は、政府などの公的な機関が、税金等の公的資金を財源に、学習権をもつ子どもへ発行する。金券を受け取った子どもは、自分が選んで通っている学校の授業料などを、この金券で支払う。金券を受け取った学校は、金券を政府等に持ち込んで換金して、学校の運営費に充てる。こうした仕組みの全体を教育バウチャー制と呼ぶ。

このように、教育バウチャー制は、学校選択とセットになっている。また、実際の教育バウチャー制では、煩雑な金券の配布と換金の手続きを簡略化するために、子どもが学校に政府から金券を代理で受け取る許可をあたえ、学校が直接政府からお金を受け取る。この場合、金券は発行されないが、生徒の在籍数に応じて政府から学校へ支払われる公的資金の金額が変動するならば、広義の教育バウチャー制とみなされる。多様な学び保障法を実現する会が提案している「子どもの多様な学びの機会を保障するための法律」骨子案も、広義の教育バウチャー制である。

教育バウチャーは、1980年代後半の臨時教育審議会をとおして、経済学者フリードマンの名前とともに日本で知られるようになった。1950年代に提案された彼の教育バウチャー案は、公立学校に競争原理を導入して教育の質向上をめざすものだった。しかし、教育バウチャーにはさまざまな案がある。次回、さまざまな教育バウチャーについて、具体的に触れたい。

イベント情報

「多様な教育機会確保法(仮称)」制定を目指すフリースクール等院内集会

学校外で学ぶことを公的に認め、応援するための法律が、超党派の議員連盟により提案されています。会場は衆議院議員会館内、200名規模の大会議室です。多くの人が集まり「新たな仕組みを求める人がこれだけいる」という事を議員の人に見せるまたとない機会です。
日時:2015年6月16日(火曜日)16時から(1時間程度)
場所:衆議院第一議員会館 一階多目的ホール
定員:200人
プログラム:
1.主催者より(奥地圭子、他)
2.国会議員より(河村建夫議員、馳浩議員、林久美子議員、他)
3.市民、関係者より
フリースクール、オルタナティブスクール、
ホームエデュケーション、外国人学校(ブラジル学校)、
不登校の子ども・親、etc
主催:NPO法人フリースクール全国ネットワーク
多様な学び保障法を実現する会
共催:超党派フリースクール等議員連盟
詳細はこちら
http://aejapan.org/wp/?p=467

オランダイエナプラン教育と日本の公教育に関するレクチャー開催!

子ども教育立国では6月にオランダからリヒテルズ直子さんを御招きしてレクチャーを開催いたします!幸福度の高い国として知られるオランダは教育最前線の国でもあります。オランダではどのような教育がおこなわれているのかを知る機会と日本の教育へのヒントがつまった二日間になります。
27日はリヒテルズ直子さんよりオランダのイエナプラン教育についてたっぷり学ぶ時間を持ちます。28日は佐藤学さん×リヒテルズ直子さんの豪華すぎる対談!!!
教育哲学から公教育に至るまで、刺激的な二日間のレクチャー、ぜひご参加くださいませ。
6月27日(土) 東京都美術館講堂
「ハピネス大国オランダのイエナプラン教育に学ぶ -クリエイティビティの本質-」
12:00 開演(開場11:30)
講演 リヒテルズ直子
質疑応答
パネルディスカッション
16:30 終演
出演:リヒテルズ直子、朝倉景樹、東京シューレ出身者
6月28日(日) 東京都美術館
「グローバル時代の公教育の未来を考える -競争から共創へ-」
12:00 開演(開場11:30)
講演 リヒテルズ直子
講演 佐藤学
対談 佐藤学、リヒテルズ直子
16:30 終演
出演:佐藤学、リヒテルズ直子、小貫大輔
参加費
1回 3500円 2回参加 6000円 学割(1回2000円 2回参加 3500円)
申込み
http://www.creative-children-education.com/#!publiceducation/c17kd

編集後記

関係者の都合で発行がほぼ2ヶ月ぶりとなりました。お待ちしていた皆様には大変お詫びをいたします。さて、明日6月16日の院内集会は私たち市民の思いをアピールするまたとない機会ですね。すでに申し込みは定員に達したようです。

(きむさと)

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