おるたネットニュース vol.5 2015年1月22日配信
コラム:「学習権2本立て」構想について
1947年以来、子どもの「学ぶ権利」を護ってきたのは、「学校教育法」でした。「学校教育法」は、すべての保護者に子どもを「学校」に通わせる義務を課しました。市町村には「学校」を作る義務を課して、誰にでも通学範囲に学校があるようにしました。これによって、誰でもが学校に行けるようになりました。
しかし、20世紀の終盤になると、「学校教育法」では子どもの学習権を保障しきれなくなってきました。
80~90年代に急増した不登校は、21世紀に入っても10万人以上で高止まりしています。「いじめ」や「学級崩壊」などでは、学校に行くことで子どもの学ぶ権利が損なわれています。さまざまな障害を持った子どもたちに対して、既存の学校の対応には、限界があります。多文化社会化やグローバル化に対応して、インターナショナルスクールやブラジル学校などが急増しました。もっと子どもの主体性を尊重する教育が必要なため、無認可の学校や、ホームエデュケーションが民間に広がっています。
そのため、民間から「多様な学び保障法」を作ろうとする動きが生まれました。これは、義務教育を二本立てとして、すべての子どもの「学ぶ権利」を護ろうとするものです。
「学校教育法」と「多様な学び保障法」の特徴をわかりやすく対照させて、表にしたものがあります。
「学校教育法」 | ⇔ | 「多様な学び保障法」 | |
---|---|---|---|
保護者の義務 | 就学義務 「学校」に通わせる |
⇔ | 教育義務 子どもに合った学びの機会を確保 |
質の確保 | 事前規制中心 行政の基準で認可 |
⇔ | 事後チェック中心 保護者が登録・届け出 互助的な支援推進機構による助言や相互認証 |
公費支出の対象 | 制度化された学校 私立学校は私学助成 |
⇔ | 学習者個人(保護者) 保護者に「学習支援金」を給付 登録学習機関による代理受領も可 |
理念の志向性 | 制度が個人に先立つ システム、公共圏が起点 |
⇔ | 個人が制度に先立つ 生活世界、親密圏が起点 |
(表は、吉田敦彦 大阪市大教授による)
コラム:「遊びの中で育つ子どもの社会性」
古山明男 おるたネット代表
子どもはどういうことで遊ぶのか、と見ていると、半世紀前も今もあまり変わりません。人気のあるのは、「鬼ごっこ」、「かくれんぼ」、「ドロケー」、「缶蹴り」です。これらの遊びに共通していることがあります。役割の逆転があることです。いままで追いかけていた者が、一瞬で追いかけられる側に回る。集団遊びでは、そこが面白いのです。
一瞬で役割を変えるルールのある集団遊びに熱中する。ここに、子どもの社会性発達の鍵があります。つまり、役割を柔軟なものにしておいて、いろんな立場に切り替えることです。必要とあれば、子どもたちがルールを工夫します。鬼ごっごの場合、単に足の速さの問題になりやすいので、「~に触っていればいい」というようなルールを持ち込みます。それは楽しいのです。
集団遊びだけではありません。ごっこ遊びのすべてが、自然な社会性習得です。人間は社会的な動物なのですから、自然な社会性習得のプロセスが存在しています。それが、ごっこ遊びや、ルールのある集団遊びなのです。
従来型学校は将来のために社会性を身につけさせるところとされています。しかし、その「社会性」がなんであるかの検討が十分に為されているでしょうか。
従来型学校の社会性は、将来の職業生活を想定しています。目上の指示に従うこと、賞罰に敏感であること、無味乾燥なことに耐えることが、社会性とされています。
それは、ほんとうに子どもの将来のためなのでしょうか。学校運営に都合がいいからだけで、子どもたちに刷り込まれているのではないでしょうか。実際の私たちの社会性は、もっと多様化しています。社会生活の基本は命令と服従ではありません。依頼と感謝なのです。階級社会で身につく社会性は、固定的です。そこで訓練される社会性は、判断停止をもたらします。
たしかに、多くの職業生活では、服従も必要ですし、無味乾燥に耐えなければならないでしょう。だからこそ、遊びに満ちた子ども時代が、子どもの成育に必要なのです。
イベント情報
社会の側に立つのではなく個の立場に立って発達障害を視る
イイトコサガシ 冠地情・冠地俊子親子講演会
日時:2015年1月24日(土)PM1:30〜PM4:30
会場:浦安市民プラザ Wave101 中ホール(JR新浦安駅 徒歩3分)
主催:発達ネットワーク☆ママの会
内容:この子にしてこの母あり、の抱腹絶倒のダブル講演会。
「うちの子、とっても育てづらいもしかしたら発達障がい?」
幼児・小学生の発達障がいの基礎知識と 子育てのポイントを知る
日時:1/31土曜日 13:30~15:00
会場:松戸市・オーガニックサロン きれいのたね
交通:JR常磐線/千代田線 松戸駅 東口 徒歩8分
参加費: 大人1名 2,000円 大人ペア 3,600円
講師:臨床発達心理士 田幡智佳子さん
詳細&お申込み:
http://www.kireinotane.jp/academia/hattatsu_shogai.html
イエナプランカフェ@浦安「日本の内と外から考えるこれからの教育」
日時:1月31日(土)午後2時半~5時まで(時間のある方は6時まで交流会)
会場:浦安市民プラザWave101 サロン5にて
参加費:500円/一家族 (子連れ歓迎)
内容:塩崎義明 x 古山明男、現役34年の小学校の先生と
オルタナティブ教育の研究&実践家の「がっつり対談」
2:30- イエナプラン教育「基本の基」
3:10- 【対談】 古山明男x塩崎義明
4:00- Q&A + 話し合い
5:00- 交流会(時間のある方は♪)
問合せ:jenaplan.urayasu@gmail.com
https://www.facebook.com/jenacafeforfuture
https://www.facebook.com/events/859503490769324/
これからの子育て・教育を考えるフォーラム(第2回オルタナティブな学び実践交流研究集会 in 関西)
日時:2015年2月7日(土)・8日(土)
会場:大阪府立大学 I・サイトなんば2F
内容:講演「子育ても学びもいろいろあっていい」 清水真砂子
立場な学びの実践交流
http://kokucheese.com/event/index/245404/
編集後記
今回は1日遅れて木曜の配信となりました。お待たせしていた方はすいません。理想の教育環境は、私たち民衆側から働きかけて実現させていく必要があるな、と最近よく考えます。最近の文科省の流れを受けて、関係者がいよいよ動き出してきているのを感じます。これからが正念場ですね。
(きむさと)