おるたネットニュース vol.6

おるたネットニュース vol.6 2015年2月4日配信

コラム:教科勉強だけでなく

古山明男

17歳の息子を持つお母さんが、息子のことで相談に来ていました。夫婦で、教育方針が合わないのでした。

息子は、中学で不登校になりました。高校は、中学で不登校だった子に対応、というのがウリの学校に入りましたが、入学してみると「もっとしっかりしろ」「そんなことじゃだめだ」の指導が多く、じきに行けなくなりました。

しかし彼は、機械いじりが大好きでした。汎用エンジンを買って、分解したり組み立てたりしていました。ボロのオートバイを動くようにしたり、太陽光パネルを作ったり、興味は尽きません。彼の技術を高く評価してくれる機械屋のおじさんもできました。お母さんが息子の機械いじりを援助していました。

私とは、近所の人の紹介で知り合いました。「そういう好きなことがあるなら、それに打ち込んでいるのが一番ですよ」と応援していました。月に1度くらい、私が「こんな面白いことあるよ」と遊びとも実験ともつかないことを手ほどきしています。

1年もすると、彼はずいぶんと元気になってきました。

そうしたら、お父さんが、黙って見ているのに耐えられなくなってきたのだそうです。そんなに元気になったなら、どこかの学校に行ったらどうだ。せめて、高卒認定の試験を目指さないのか。お兄さんも、父親に味方します。お兄さんは普通に頑張って大学に行けた人だから、弟が歯がゆい。

それで、お母さんが板挟みになって、駆け込んで来たのでした。結論はわかりきっているのです。本人がその気でないのに、やらせたって意味ありません。でも、お母さんには、支援してくれる人が必要でした。

機械いじりをしている彼は、情熱を向けることのできることを持っています。その情熱から、いろんなものが生まれてきます。偏差値を頼りに大学に行って、就職してそれなりに生きるより、ましな生き方ができそうじゃないですか。それは、お母さんと意見が一致。

学ぶというと、教科勉強のことしか頭に浮かばない人たちがたくさんいます。勉強しない人間は破滅してしまうと思っている人たちもいます。自分がやらされてきた人たちは、やらない人を見ると罪悪めいたものを感じるものです。お父さんもつらい思いをしているのでしょう。

でも、です。その17歳の息子が、どれほど手先が器用であることか。マッチを使った小さなロケット花火を作るときに、どれほど工夫することか。そういうことのほうが、ずっと大事です。

文科省「フリースクール等に関する検討会」傍聴記

古山明男

1月30日に文部科学省で「フリースクール等に関する検討会議」(第1回)が開催されました。文科省がフリースクール支援へと方向転換する歴史的第一歩になりそうなので、傍聴に行きました。

委員の肩書きを見ていくと、民間フリースクールが少ない。公設民営や障害児教育を含めても4人。「フリースクール等」なのに、大丈夫かいな、というのがこの会議への関心でした。

聞いてみると、議論の流れは悪くなかったです。事例発表が4つありました。東京シューレ、スマイルファクトリー、フリースペースえん、楠の木学園いい内容でした。文科省の会議の場でこういう内容を聞けるようになるとは、と思いました。

座長は永井順国氏(政策研究大学院客員教授 元読売新聞社)。11月のフリースクールフォーラムで講演もしていた方です。フリースクールや多様な教育の立場を理解してまとめ役になれる人だと思われます。

はじめに文科省事務局から説明がありました。「フリースクール等に関する主な論点例」として、文科省内の論点整理が示されました。文科省からのまとめで気が付いたことは、「学習」という言葉を多用していて、「教育」を使っていないことでした。これは、学ぶ側をどう支援するかの問題だ、と文科省は認識している、ということだと思います。

一方で、文科省が「学校外の学習」と言うのと、民間フリースクールが「学校外の学び」と言うのでは、ずいぶんとニュアンスが違います。不登校に関して、「学校外の学習」を支援する体制をいかに作るか、それを考えましょう。それが、文科省の基本線のようです。

奥地委員から、「フリースクール等」には、シュタイナー教育、サドベリー教育などの多様な教育を含むのか、との質問がありました。文科省事務局から、「含む。この会議ではとりあえず、義務教育段階で、不登校の子どもに関することを取り上げる」という答えでした。

(この詳細、議事録で確認する必要があります)

従来の文科省に比べれば大きな一歩を踏み出しています。それは評価しないといけない。でもこれだと「多様な学びを選択できるようにする」、というところまで行けるかなあ、難しそうだなあと思いました。

それを広げていったのが、下村文科大臣と奥地さんでした。下村大臣が途中から出席し、あいさつしました。学校という枠を超えて検討できる。画期的な検討会議になる。いままでのような学校教育ではだめだ。20年先を考えないといけない。子どもにとっての未来の教育は何か、という視点を示してほしい。

教育多様化に関する下村氏の見識は高いな、と思いました。この人は、優れた人材を育てるには、という枕詞がつくので人材しか考えていないのでは、という疑念も呼ぶのですが、いまの学校教育じゃだめだ、フリースクール系の教育が大事なものを持っているということは、よく理解しています。

奥地委員が、機を捉えて「選べることが大事。多様な学びの中から、うちの子にはこれが合っているというものを選べるしっかりした仕組みが必要。選べる仕組みを法律で保障する。その学ぶ場は、関係機関によって相互認証する。社会が納得できるやり方を。」

このことを、「言いました。記録に残してください。検討課題にしてください」という形にしました。

これから、文科省の「学校外の学習」に対して、学びを狭く考えないでください、こんなにいろんな道があります、という民間側の構図になりそうです。ホームエデュケーションは教科書的な学習が向かないので、規制はずしの鍵になるかな、と思いました。

イベント情報

これからの子育て・教育を考えるフォーラム(第2回オルタナティブな学び実践交流研究集会 in 関西)

日時:2015年2月7日(土)・8日(土)
会場:大阪府立大学 I・サイトなんば2F
内容:講演「子育ても学びもいろいろあっていい」 清水真砂子
立場な学びの実践交流
http://kokucheese.com/event/index/245404/

編集後記

フリースクール等に関する有識者による検討会が始まりました。6月頃の中間まとめまでの間に大体どのような方向で支援していくのか、というのが決まるそうです。これから関係者がどのように提案し、働きかけていくのかが肝です。「未来」は創るものだ、と最近つくづく思います。

(きむさと)

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