おるたネットニュース vol.2 2014年12月3日配信
コラム:子どもの成長そのものに責任を取る教育を
おるたネット代表 古山明男
私塾をしている。中学生たちが定期試験の前になると、「きょうは、これをやらせて」と学校で出された課題を持ってくる。遊びたいのをこらえて一生懸命にやっている。
その後ろ姿を「よく努力している。素晴らしい」と思う人たちは多いであろう。しかし、「せっかくの成長期に、自由を奪われている」と思う人たちもいる。
私は後者である。子どもたちを点取り勉強から解放したくて私塾をやっているのだが、しょせん週1回の開催である。子どもたちが学校での点取り勉強に絡め取られていく過程を、つぶさに観察することになる。
人間の学びには、大きく言って2種類ある。一つは、知識や技能の習得である。蓄積可能なものを増やしていく学びである。
もう一つは、ただそれを生き抜くことでしか学べないものである。蓄積可能ではない。典型的なものは恋愛である。恋愛に関する書物はいくらでもあるが、いくら本を読んでも学べるものではない。そこをくぐり抜けると、いつのまにか人間が一まわり大きくなっている。
人間の成長は、蓄積型の学びで起こっているのではない。成長は子どもにとって、次から次へと、きらきらと輝くものが現れてきて、それに吸い込まれていく過程である。幼児が嬉々として、モノをいじるさま、小学生が友達との遊びに熱中するさまは、この世界と恋愛をしているようなものである。子どもたちは、虫とでも、ビーズとでも、恋愛ができる。世界に見とれ、触れ合って、子どもは日ごとに成長する。しかし、それは目標を達成しようとしたものではない。
成長真っ盛りの子どもたちに「目標に向かって努力する」ことを強制するのは、人間性に対する冒涜に思える。それは、生の輝きを見失わせることである。
知識や技能も大事なものであることは、もちろんである。しかし、生きることがあった上での知識や技術である。学校の目的が、達成度と卒業証書に置き換えられたとき、学校は人を育てるという使命を放棄している。
いかなる達成度でもなく、人間の成長そのものに責任を持つタイプの教育をできるようにしてほしい。それは、個人の幸福にとっても、社会の発展にとっても、大事なことである。
報告:文部科学省フリースクール等フォーラム・不登校フォーラム
フリースクールや不登校の関係者を集めたフォーラムが二つ、文部科学省の主催で行われました。11月24日に文部科学省講堂で「フリースクール等フォーラム」行われ、これまでではじめてフリースクール関係者に案内状が出されました。
文科大臣挨拶では、学校だけでなく、学校に行かない子どもたちから人材が育ってくるだろうというメッセージがあり、フリースクールの事例発表がありました。オルタナティブ教育の国際比較に詳しい永田佳之聖心女子大教授の講演がありました。
11月28日には、オリンピックセンターで、「文科省不登校フォーラム」が開かれました。学校関係者、教育委員会関係者と共に、不登校体験者やフリースクール関係者が参加しました。文科大臣のあいさつには「教育を多様化し、一人一人を大切にする」という発言がありました。
教育を従来型の学校の枠だけでは捉えないという教育政策の転換の、キックオフとしてのイベントでした。12月には、有識者会議ができて、来年5,6月頃に中間報告、来年度末に提言が出される予定と発表されています。
(古山)
イベント情報
見学会「フリースペースって、どんなとこ?」
日時:2014年12月13日(土)10時~12時
会場:川崎市子ども夢パーク(神奈川)
主催:NPO法人フリースペースたまりば
連絡先 044-833-7562
東京サドベリースクール ファミリー向け講演会
「親が変われば、教育は変わる!」~すべては親の気づきから始まる~
日時:平成26年12月14日(日) 13時00分~16時00分
会場:東京都渋谷区(詳細はお申し込み後にご案内)
主催:東京サドベリースクール
事前申込制 締切は12月10日(水)16:00まで
http://tokyosudbury.com/event/7723
これからの子育て・教育を考えるフォーラム(第2回オルタナティブな学び実践交流研究集会 in 関西)
日時:2015年2月7日(土)・8日(土)
会場:大阪府立大学 I・サイトなんば2F
内容:講演「子育ても学びもいろいろあっていい」 清水真砂子
立場な学びの実践交流
編集後記
11月24日、28日、文科省主催のイベントに参加しました。現場の当事者の声を伝えて行くことは本当に大事だと思いました。
(きむさと)