おるたネットニュース vol.44 2024年4月3日配信
多様な学びで身につく力ってなに?
喜多明人(早稲田大学名誉教授)
1月末のNHKスペシャルで「学校のみらい」という番組が放送され、古山明男さんとまなびスペースCOCOCARAが紹介されていた。
この番組で大変印象に残った言葉がある。山形県の天童中部小学校で多様な学びを実践していた先生が、「やっていて不安もあるんです。全国学力テストで結果が出ればいいのですが、成績が悪いとちゃんと教えていないと、いわれてしまう」と。
番組後半の討論会では、信州大の先生が、「もう学力テストの時代じゃないんじゃないですか」と語ったことに対して、文科省の初等中等教育局長が、「でも、学力テストをやめるわけにはいかない、多様な学びも基礎学力あってのことですから・・・」と答えていた。
どうも話がかみ合っていないな、と感じた。ぼくも実感として多様な学びを妨げている要因の一つに、文科省が長年実施してきた「全国一斉学力テスト」の存在があると思う。しかし、それは基礎学力のチェックとか、学習指導要領の実施の効果の調査とかいうレベルの問題ではないように思う。
多様な学びの発展を妨げている要因の一つは、一言でいえば「競争学力」だと思う。そして「競争学力」観にもとづいて実施されてきたのが全国学力テストだった。
いま、入試シーズンが終わったところだが、受験勉強で苦しんでいる子どもや応援している親御さんたちに問いたい。昨年の出生数は、ついに80万を切って75万人。ぼくが生まれた1949年生まれは260万人。大変な少子化、というよりマイノリティー化だ。高校も大学も定員割れで統廃合や廃校が相次いでいる。求めればどこでも入れるのに、受験熱は高まり、有名塾に入るための塾が栄える状態。
なにか、おかしくありませんか?そろそろ競争学力を見直しませんか?
ところで、多様な学びで身につく学力って何?
「それは、震災が起きたときに生き延びる力です」(高根沢町「ひよこの家」)、「困ったときに助けてくれる仲間をつくる力だな」(川崎市「えん」西野博之)
はたして、相手を蹴落として身につける「競争学力」で、震災を生き抜いていくことができるのだろうか。
喜多明人(早稲田大学名誉教授)
イベント情報
黒川里山マルシェ with 花まつり
- 主 催 川西市黒川里山センター
- 日 時 4月7日(日)10時〜15時
- 参加費 各お店ごと
- 場 所 川西市黒川里山センター
- 詳 細 https://cokreono-mori.com/event/2024-4-07.html
レッジョ・エミリア・アプローチを知る 指導者養成講座 応用
- 主 催 NPO法人子どもARTプラットフォーム
- 日 時 4月13日(土) 、14日(日)
- 参加費 ¥32,000- [税込]
- 場 所 東京都中野区
- 詳 細 https://www.creative-children-education.com/lecture-reggio-advance
「みんなの学校」をつくろう/木村泰子(オンライン、録画動画付)
- 主 催 NPO法人多様な学びプロジェクト
- 日 時 4月20日(土)14:00-16:00
- 参加費 通常 1,600円
- 場 所 オンライン
- 詳 細 https://tayounamanabi20240420.peatix.com/view
森のムッレ全国シンポジウムin山形
- 主 催 NPO法人青空保育たけの子
- 日 時 2024年4月28日(日)・29日(月・祝)
- 参加費 2日参加 10,000円(28日昼・夜 29日昼 食事込み)
- 場 所 山形県飯豊少年自然の家 山形県西置賜郡飯豊町3535-33
- 詳 細 https://morinoyouchien.org/info/join_us/post-13723.html%EF%BC%9D
リヒテルズ直子のイエナプランを学ぶオンライン講座基礎編
- 主 催 ほんの木
- 日 時 2024年5月10日-7月26日 20~22時(2時間)
- 参加費 3万円+税(全8回)
- 場 所 オンライン
- 詳 細 https://japanjenaplan.org/news/richters_honnnoki_basic_2024/
子育てカフェ&BAR「こどもの森のハッピーアドバイス」
- 主 催 こどもの森のハッピーアドバイス
- 日 時 第2土曜日10:00-12:00、第3木曜日20:00-22:00
- 参加費 2200円
- 場 所 箕面こどもの森学園
- 詳 細 https://kosodatecafe-bar2024-1.peatix.com/
編集後記
新社会人や新入生の姿を見て、新しい年度が始まったなぁと感じています。皆さんは、ご自身や周囲での変化はあったでしょうか。過ごしやすい季節になってきたとは言え、新しい環境にストレスを感じることもあるかもしれません。どうか自身の心身を労わる時間も大切にしてください。
今回のコラムは、早稲田大学名誉教授であり子どもの権利に詳しい喜多明人さんにご寄稿いただきました。1月に放送されたNHKスペシャルの内容から、教育の本質について鋭い視点で指摘をされています。喜多さん、ありがとうございます。
建石