おるたネットニュース vol.49

おるたネットニュース vol.49 2025年2月10日配信

「じょうず、へた」から自由になること

古山明男

私は、絵が好きでけっこう描いていました。三十代のころ、周囲の人にけっこう高く評価されました。「これなら、プロになれますよ」と言ってくれる人たちがいました。自分でもその気になり、本気で描き始めました。

そうしたら、良いものがさっぱり描けなくなりました。

理由は、自分でもわかりました。一流の絵をたくさん見ているので、鑑賞眼だけは肥えています。すると、自分の描いた絵の下手くそさがたまらない。すぐ、「なんじゃあ、こりゃあ」と、失望してしまいます。さりとて、それをなんとかするほどの技倆は持っていない。

そうすると、描くたびにストレスを味わい、やるせない思いに沈んで終わります。いつか、絵筆を取ることがなくなっていきました。

最近、子どもたちを見ていて、絵の上達について気付かされることがありました。私は、私塾とフリースクールをしています。やって来た子どもたちは、すぐに紙やら、ホワイトボードやらに、絵を描きます。

よくまあ、描くこと描くこと。

そのまあ、下手くそなこと。

ところが、下手であることなど、まったく気にしていない。

それが、いつのまにか、うまくなっていく。

ああ、これなのだ、これなのだ。この「じょうず、へた」を全く気にしないことが、絵を志したときの私にあったら、私は絵をものにすることができたでしょう。

学校の、図工でも音楽でも、評価をします。昔のように露骨な5段階評価をしないまでも、何が上手で、何が下手かを、子どもに伝えようとします。でもそれが、学校の子どもたちが、あの学校特有の型にはまった絵を描き始める理由です。

必要なのは、「じょうず、へた」の評価ではなく、対話なのです。子どもがモンスターを描いたなら、「お、強そうだな。それは、レーザービームか?」と遊べばいい。お姫様を描いたなら、「お姫様、結婚していただけますか?」と申し込んで、「イヤだよ」と言わせればいい。

子どもは、常に、クリエイティブに何かを作り出そうとしています。その作り出した世界に入り込んでいって、共に遊ぶことが、教育の核心だと思います。

(ふるやま あきお 教育研究家)

イベント情報

みんなで創る ミライの学校 プロジェクト#17
  • テーマ: 「新しく私立学校を創る 良さと意義とは」
  • 開催日: 2025年2月14日
  • 認定NPO法人コクレオの森
  • https://cokreono-mori.com/index.html
お味噌を作ろう (黒川里山センター)
  • 開催日: 2025年2月9日・16日
  • 認定NPO法人コクレオの森
  • https://cokreono-mori.com/index.html
子育てカフェ&BAR こどもの森のハッピーアドバイス
  • 開催日: 2025年2月8日
  • 認定NPO法人コクレオの森
  • https://cokreono-mori.com/index.html
子ども火祭りin川崎市四ツ田緑地
  • 開催日: 2025年3月15日
  • 森のようちえん全国ネットワーク
  • http://morinoyouchien.org/
馬の暮らしから学ぶ新しい保育と支援のかたち勉強会
  • 開催日: 2025年2月23日
  • 森のようちえん全国ネットワーク
  • http://morinoyouchien.org/
第9回日本イエナプラン教育全国大会
  • 開催日: 2025年2月11日
  • 日本イエナプラン教育協会
  • http://www.japanjenaplan.org/
ヒロックの蓑手さんに聞く! 幸せになる力を育むための探究
  • 日時:2025年2月22日
  • 多様な学びプロジェクト「とまり木オンライン」
  • https://online.tayounamanabi.com/event/
保護者おしゃべり会
  • 日時:2025年2月20日、3月8日、3月24日
  • 多様な学びプロジェクト「とまり木オンライン」
  • https://online.tayounamanabi.com/event/
    詳細については、各イベントの公式サイトよりご確認ください。

編集後記

ニュースレターの発行を再開しました。古山さんのエッセーやイベント情報を楽しみにしてくださっていた皆さん、お待たせしてすみません。発行の編集を担当している私が昨年8月に出産し、しばらくお休みをいただいていました。現在子どもは0歳5ヶ月になり、日々目まぐるしく変化しています。イタリア発祥のレッジョ・エミリア教育では、「子どもは100のことばを持っている」と考えています。でも、「大人たちが99を奪う」と。

子どもが持っている100のことばを、奪ってはいけない。我が子を見て、そして古山さんのエッセーを読んで、そう強く感じています。

随分と時期が遅くなってしまいましたが、2025年も皆さんどうぞよろしくお願いします。

建石

タイトルとURLをコピーしました