多様な教育を推進するためのネットワーク / Network for the Promotion of Educational Diversity

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シュタイナー教育(ヴァルドルフ教育)

シュタイナー教育(ヴァルドルフ教育)は、社会、経済、教育、医学、農業など人間生活のあらゆる分野に新機軸を示したオーストリア(現在のクロアチア)生まれの哲学者、ルドルフ・シュタイナーによって基礎づけられました。シュタイナーは独自の人間観による12年一貫教育の教育システムを提示しました。教育内容はもちろん、教員の養成方法、学校の運営の方法までその指針を作り上げ、シュタイナー教育を行う学校や幼稚園が広がっていく基盤をつくりました。

ルドルフ・シュタイナーは、1890年代の終わり頃から社会問題と教育問題を取り上げるようになりました。その鍵は、教育によって自由な人間精神を発展させることでした。シュタイナーは、当時のヨーロッパ諸国が国力増強の手段として教育を国家制度へ組み入れていくことを批判し、同時に、社会主義運動は国家を経済組織へと再編し、教育を経済に隷属させてしまうだろうと指摘しました。

第一次世界大戦終結後の1919年には、国家原理からも経済原理からも自由な学校として自由ヴァルドルフ学校の設立に関わりました。当時ではたいへん珍しい労働者の子どもたちための男女共学校としてスタートしたシュタイナー学校は、その後、欧米やオセアニア地域を中心に世界的な広がりをもつに至りました。

現在、世界には1,000校以上の全日制学校(2010年現在、国際ヴァルドルフ学校連盟登録数)と1,500園以上の幼稚園(2010年現在、国際シュタイナー/ヴァルドルフ幼児教育連盟登録数)が存在しています。1990年代に入るとアジア地域でも関心が高まり、日本をはじめ、韓国、台湾、中国、マレーシア、タイ、ネパールなどで学校や幼稚園が始まりました。日本では学校法人立やNPO法人立などの全日制学校が8校(2010年現在、全国シュタイナー学校運営連絡会による公称数)ほどあり、幼稚園は50園以上(2010年現在、日本シュタイナー幼児教育協会登録園)活動しています。

シュタイナー教育は、おおよそ以下のように特徴づけられます。

  1. 人間の発達や生理・心理についての緻密な理論に基づいている。シュタイナー教育のすべては、「子どもたちはこういうふうに発達するのだから、このように向き合っていくとよい」という基盤から導き出されており、誕生から7歳までは肉体と感覚の発達、7歳から14歳にかけては感情の発達、14歳以降に知性の発達が中心になるとして、早期の知的な教育を避けている。

  2. 授業全体を芸術的に扱うことがふさわしいという考えから、教育内容をむき出しのまま教えない。どのような教科においても、詩を唱え、歌を歌い、リズムにあわせて動き、絵画や造型活動で手を動かすことで、生き生きとした感情と意志を通して子どもたちは学ぶ。

  3. 教師の自由な創意と自主性がとりわけ重視される。教科書を踏襲するのではなく、時代や地域の文化状況、眼前の子どもたちの実情にあわせ、教師自らが授業をその都度創造していくことが目指される。そのため、教師は授業の準備に多くの時間を費やす。また、教師の創造性や自発性を支えるための、さまざまな芸術的トレーニングやメンタルトレーニングが確立されている。

  4. 教師会の役割が重視されている。教師会では、子どもたち一人一人の姿を複数の教師の目を通して共有しあい、その子の本質に多面的に近づくための努力がなされている。教師会には学校医も参加することが多い。医師が教育に関与することにより、予防医学や治療的な視点を教育に活かす可能性も開かれている。

  5. 教育は文化発展を通して社会に寄与するとする社会観に基づき、国家原理および経済原理からの自主独立を理念として掲げている。

  6. 幼稚園では異年齢の縦割りクラス、小学校以上では同一担任による8年間持ち上がり制の12年間一貫教育、同じ教科を数週間にわたって学ぶエポック授業、オイリュトミーと呼ばれる独自の身体芸術を採り入れるなど、外面的にもさまざまな特徴をもつ。

参考資料

参考文献

  • シュタイナー教育芸術友の会編『世界のシュタイナー学校はいま…』モルゲンランドパブリッシング、2005年

  • クリストファー・クラウダー、マーティン・ローソン共著『シュタイナー教育』イザラ書房、2008年

  • 吉田敦彦著『世界のホリスティック教育 ― もうひとつの持続可能な未来へ』日本評論社、2009年

  • 国際ヴァルドルフ学校連盟編『自由への教育 ― ルドルフ・シュタイナーの教育思想とシュタイナー幼稚園、学校の実践の記録と報告』ルドルフ・シュタイナー研究所、1992年

  • ルドルフ・シュタイナー著『精神科学と社会問題』みくに出版、2010年(初版:人智学出版社、1986年)

本稿の文責:古山明男/佐藤雅史

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