多様な教育を推進するためのネットワーク / Network for the Promotion of Educational Diversity

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施設養護児

施設養護児(施設等で社会的養護を受けている子ども)

親のいない子どもや、遺棄などで親が不明な子ども、親の病気・障がいや虐待などで親と暮らすのが不適当と児童相談所が判断した子どもたちを、親に代わって施設や里親などが育てる仕組みを「社会的養護」といいます。施設には、児童養護施設、乳児院、母子生活支援施設、自立援助ホーム、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、などがあり、里親家庭と合わせて全国で約5万人の子どもたちが社会的養護の下で暮らしています。

特に施設で暮らす子どもたちにとっての大きな課題の一つが「学習の遅れ」で、施設の子どもたちの多くがそうした状態にあるようです。その理由としては、生まれ育った家庭が落ち着いて勉強するような環境ではないために勉強の習慣が身についていないことに加え、児童相談所や一時保護所などに滞在している間はほとんど勉強ができていないことがまず挙げられます。施設に入ってからも、環境の変化に適応するのに時間がかかる、たくさんの子どもがいる環境で勉強に集中できない、塾や家庭教師などを頼むお金がない、職員は生活面のケアで手一杯で勉強を教える余裕がない、精神的な安定感を持つことが難しい、などの理由で対策は難しいようです。

学校はそのような子どもたちに対して何か特別な配慮をしているかというと、必要に応じて児童養護施設と学校相互の教員・職員が参加しての情報連絡会を開催しているところもあるものの、多くは「問題が起きれば対処する」という程度にとどまり、学習面での対策や心理面への配慮などは特にとられていないようです。

児童養護施設の子どもたちは、原則として高校を卒業した18歳で自立を余儀なくされていて、高校に進学できなかったり高校を中退したりすれば、施設から出て働かなくてはいけません。そうした立場にいる子どもたちにとっては、勉強や進学は特に深刻な問題です。

それだけでなく、勉強の出来不出来が子どもの評価の最たるものになってしまっている今の学校では、勉強について行くことが難しくなると、勉強が嫌いになるだけでなくそれ以外のことにも苦手意識や劣等感を持ちはじめ、自分自身のことや将来に対して自信をなくしたりすることが多くなってしまいがちです。

そうした子どもたちに対する支援活動としては、各施設が個別に学生などのボランティアを募集したり、地域のNPOがボランティアを募って施設に派遣したりという形で、以前から行われてきました。

近年では、施設の希望や対象の子どもの状況をヒアリングし、登録している学習支援ボランティアの中から適切な人を探して派遣するNPO(*1)や、教材・物品、学習法に関する研修、指導情報等を施設に提供している企業(*2)などがあります。また、NPOと企業がコラボーレーションして学習支援プロジェクトを立ち上げたケース(*3)などもあり、多彩な動きが生まれています。

こうした学習支援の取り組みがあるとはいえ、社会的に擁護される子どもの一番の問題は、コミュニケーションがうまく取れない、他人との関係を築くのが難しいという点にあります。ちょっとしたことでうまく行かないと「自分が悪いんだ」と自分を責めたり、他人と関係を結ぶことに臆病になってしまったり、屈折した形で自分を表現してしまったりする子どもたち。その背景には、幼少時に親の愛情を十分に受けられなかったことがあるのでしょう。

学習支援活動を行うNPOは、子どもたちの表面的な言動よりも、底にある気持ちや感情を理解する姿勢で子どもたちに接するように、というアドバイスを支援者たちにしています。支援者には学生ボランティアが多いために、そうした子どもをそのままに受け入れたり、いい関係を築いたりすることがうまくできないという悩みを抱えてしまうこともよくあるようです。それでも忙しくて一人ひとりの相手を十分にできない職員に代わって、「自分のことを見てくれる」と感じられる支援者の存在価値は、かけがえのない大きなものと言えるでしょう。

  • 脚注

    *1 ) 3keys、ガクボラなど

    *2 ) KUMON

    *3 ) Living Dreams、キッズドア、河合塾の3者が「未来をつかむ!Kids Support Project」を立ち上げた

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